○後縱靭帯骨化症とは?
脊椎椎体の後縁を連結し、脊柱のほぼ全長を縦走する後縦靭帯が骨化することにより、脊柱管狭窄症を呈し脊髄または神経根が圧迫され感覚障害や運動障害などの神経症状を引き起こす病気です。
頸椎に最も多く、胸椎や腰椎にも生じます。
日本人や東南アジア系人種に多く、白人には少ないです。
病気が発症するのは中年以降、特に50歳前後で発症することが多く、男女比は2:1と男性に多いです。
また、糖尿病や肥満の患者様に発生頻度が高いことがわかっています。
○この病気になる原因は?
多くの説があるが現在のところ不明確である。
遺伝的素因、性ホルモン異常、カルシウム・ビタミンD代謝異常、糖尿病、肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレス、またその部位の椎間脱出などがあげられます。
これまでの家計調査や双子の調査などにより病気に遺伝が関係していることは明らかであるが、血縁者に必ず遺伝するわけはなく、今後疾患感受性遺伝子の特定が期待されています。
○この病気になったらどんな症状が出るのか?
頸椎での初期症状は首筋や肩甲骨周辺、指先の痛みや痺れがあります。
進行すると次第に痛みや痺れの範囲が広がり、脚の痺れや感覚障害、足が思うように動かないなどの運動障害、両手の細かい作業が困難となる手指の巧緻運動障害などが出現し、重症化すると立ったり座ったりすることが困難になります。また、排尿排便障害が出現し一人での日常生活が困難になることもあります。
胸椎での初期症状は、体幹や下半身に症状が出現します。下肢の脱力や痺れが多く、重症化すると歩行困難、排尿排便障害が出現します。
腰椎では、歩行時の歌詞の痛みや痺れ脱力などが出現します。
全ての患者様において症状が悪化するわけではなく、半数以上は数年経っても症状は変化しません。ただし次第に症状が悪化する場合は、手術を要することもあり、軽い外傷、転倒などをきっかけに急に手足が動かすづらくなったり、今までの症状が強くなったりすることもあります。
○どうしたら確認できるの?
①自覚症状および身体所見
・四肢躯幹の痺れ、痛み、感覚障害
・四肢躯幹の運動障害
・膀胱直腸障害
・脊柱の可動域制限
・四肢の腱反射異常
・四肢の病的反射
②血液検査所見
一般的に異常を認めません。
③画像所見
・単純X線
側面像で椎体後縁に接する後縱靭帯の骨化像または椎間孔後縁に突起する黄色靭帯の骨化像が見られます。
・CT
脊柱管内に後縱靭帯または黄色靭帯の骨化が見られます。
・MRI
靭帯骨化のよる脊髄圧迫が見られます。
○この病気と似た症状は?
硬直性脊椎炎、変形性脊椎炎、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊椎脊髄腫瘍など
○治療法
保存的治療として骨化によって圧迫されている神経を保護することが治療の目的となり、頸椎では安静保持を保つため外固定装具(頸椎カラー)の装具などを行います。
この時頸椎は快適な位置であることが必要で、高さの調節が可能な装具がオススメです。
また首を後ろに反らせる姿勢は悪化させる恐れがあるため避ける必要があります。
頸椎を保持しようと首肩の筋肉の緊張による症状がある場合はマッサージ、鍼灸治療により緩和させることも期待できます。
○日常生活での注意点
軽い外力でも神経障害が急速に進行したり、四肢麻痺になるケースがあるので、転倒などには十分注意する必要があります。